2013年12月18日水曜日

昔語り 松っつあん

昭和15年頃、鉄砲ぶちの松っつあんというおじさんがいた。一人で町はずれの貸家に住んでいて普段は山仕事をして暮らしていた。 秋になると猟銃を肩にして里山へ狩りに出掛けて行った。獲物は山ウサギ、ヤマドリ、キジバトなど小動物だった。「鉄砲ぶち」は方言で「鉄砲を撃つ」という意味だ。

松っつあんは夕刻になると獲物を下げて、家にやって来た。キジバトのこともあれば、山ウサギ、ヤマドリだった。それをうちのおっかさんが調理して一緒に食べた。松っつあんが来るのが楽しみだった。

夕食が済むと松っつあんの鉄砲ぶちの楽しさや自慢話が始まるのだった。中でも面白かった話は狐に化かされた話だった。

「俺が山から帰って来る途中、いずも川なんかあるはずねーのに、広い川があってよ、橋がねーし、しゃーねーからジャブジャブと川に入って向こう岸まで渡ったら川が消えっちまったんだ。あーこれあ狐のヤロが俺のこと化かしやがったんだな。」

「狐の嫁入りっつうのも見たげんと、夕方山の向こうに提灯の行列が見えんだ。チラチラと提灯の明かりがきれ一だったな」

というような話が楽しみだった。

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